2017-01-01から1年間の記事一覧

本のこと

鞄がたいらであること、たいらになってしまうこと、 わたしがそれに守られていること。 どんなに重くなってしまうとしても、鞄にいれておくことで救われるものがほんとうにあるのだと、強く強く実感した一年だった。

ブラインド

終わるんだな。今でも悲しくてただ悲しくて叫びだしたくなる時がある。 誰かに謝りながら眠る夜も、 そのひととすれ違って息をとめる瞬間も、 ぜんぶきらいだ。つらかった自分のために、 忘れてやろうなんて思わないけど、 ほんとうは、わたしが覚えていたい…

誕生日おめでとうの日

メリークリスマス。 ネットのおともだちとおしゃべりをして楽しい夜ふかしだった。あしたからまた駆け足だね。 きらきらしたものをちゃんと抱いていかなければ。 ひかりから鳥のかたちに戻ったらさよならをする約束だった

冬の切手の棚

わたしがそこに行けなくても、手紙は届くからすごいね。 元気ですって言って。 元気ですかって聞いて。返ってこなくてもいい言葉は、それでもすっくと立つ一輪花みたい。 星に指あるいは薪に降れる雪倒れることは抱きしめること

綿菓子の温度

ふるもっこ、という言葉、 たいそうよい表現だなと学生のころから思ってた。 なんだか白いプードルが浮かぶの。

きみの名前はすてき

末っ子の弟がかわいくて心配なので、 彼が大丈夫になるまでは死ねないなって思う。 しろしろしろ。おまえに雪の草はらを手に入れさせる。かみさまかみさま。

声ではわからない

ひさしぶりに風邪らしい風邪をひいて、喉がつぶれた。熱はない。ぬいぐるみと過ごす。 聖夜じゅう探すアパートきらきらのこの木がいいと赤子は指せり

野ざらしの自転車

森を思いだすようよ、と歌うように言う女の子のことを考えていて。 (こじかちゃんと呼んでいる) なんとなく、森のにおいは雪のにおいにとてもよく染みている気がした。 雪が降った日。

蝶と椅子

美術館の図書館にこもって、ひたすら蔵書をぱらぱら、気ままにめくる、そんなぜいたくな暮らしを少しの間でよいからしてみたい。この世界に美しいものがたくさんあるということ、美しいものを生みだせるという真実が、とても嬉しい。

金色

『蜜蜂と遠雷』を読んだ。 これだけあつい本を読むのはひさしぶり。読もうと思えば、きっと時間はあったのだろうけれど、とても読む気力がなかったのだな。逃げたくて逃げたくて、いつも不安で大丈夫なことなんか全然なくて。読書がちゃんと楽しい。 楽しか…

クリスマス・ソング

今年はじめてのクリスマスソングを聴いた。 いっとう好きな季節がやってくる。祈りが祈りのまま、きれいごとがきれいごとのまま、ゆるしてもらえる季節。 はつゆきよ水仙の束くっきりと抱いてこの世の道はあかるく

白いかんむり

そこそこの雪国の子だからって雪の日も自転車に乗る能力をみんなが持っているわけではないのよ。

光の貸し借り

手当てされている、と思う。日々。 銀河鉄道に乗れないぼくたちは靴もとっくに流されていて

みぞれ

あしたは雪の予報。 耳当てとマフラーと手袋とコート、 完全防備の季節だよ。 しもやけの手にあってなお一匹の虫くりかえす雪の練習

ねこよ

アプリ「ねこあつめ」の平穏な世界が大好き。 つらいとき「ねこよ」と心のなかのねこに呼びかけるくせが抜けなくて、 最近はなんでもないときにも「ねこ」という単語が口を突いてでてくる。 差し入れる手、手紙、葉書、ポストには幾百のあじさいのてざわり

街の名前で呼ばれる

日曜日のシン・ゴジラ、おもしろかったな。 またみたいな。 これって夢 ゆめじゃないの どの町もわたしを転校生って言って

天井の蜘蛛

右手で左手を、あるいは左手で右手を、 握る、というか、包むようにあたためる。 だいじょうぶ、と言う。 ほどかれるリボンと同じスピードでその火と日々をはるかに消せり

エッシャーの絵の国の女の子

『レモンケーキの独特なさびしさ/エイミー・ベンダー』を再読中。 たださびしくて泣いた小説ってあんまりない気がする。

駆けてくる白い犬

1週間、がんばりました。土日も出たし、そこそこ残業したけど、前の課で定時に帰ってたころよりもずっと気持ちが楽。 ひとつふたつみっつ、新しいことを覚えたので、来月はもうすこしうまくやっていけるはず。ちゃんと逃げだしてよかった。

へちかむ

今日はカレーだーとうきうきしながら帰路についたら、 お月さまがあんまり大きくて金色でびっくりした。おなかが空いていなかったら、月のほうへほうへと自転車をこいでいたと思う。 誤字だらけの手紙を抱いて雨の午後破ってもいい約束をする

わたしにとっての

絵を描いてもらえたら、 そのカンヴァスを枕にして眠ろうと思う。 射ち砕け翡翠、どうしてわたくしはわたくしでないものになれない

花瓶に花、本棚に本

近所の図書館は夜8時くらいまで開いてるので、 仕事帰りに寄れてありがたい。 今日は休館日だったようで、あかりの消えた図書館をひさびさに見た。死んだら本になりたい。 本は読まれなくてもさびしがったりしないから。と、女の子が言う短編小説を思い出す…

家と話す

その家が好きでその家族が好きで、 だから家つきの幽霊になるひともいるのではないか。

泣くと眠い

わたしはわたしが心を動かしたことのために泣きたいのであって、 わたしを大事にしてくれない人のために泣かされるのはやめたい。

褪せても青い

通勤路のおうちの軒先にずーっと咲いていた朝顔、 今朝見るとあとかたもなかった。枯れるまでと思っていたのに、 さよならはとうとつだ。 何度めの入り日 椅子ごと燃えているあなたの肩にのばらの種を

泥棒のはなうた

自転車に乗ると手が冷えて冷えて、 雨が降るとさびしくなって、 おうちの床暖が心地よくて、 お鍋がおいしい。もう冬になるんだなあ。 幽霊になれたらピアノに住むのだと遠い話をきみはうたって

キャビネット

今もまだゆるされませんか? ブックエンドの向こうに行ってはだめですか?

鏡(ごめん、ありがとう)

母校で選挙。遠くおぼろでも、やっぱり、わたしにやさしくしてくれたひとたちはいて、いっしょにいて楽しかったひとたちはいて、そのひとたちとの思い出が大切で、今もまだ好きなままなのだった。 ねえ欲しい願いを言って 善い悪いなどない星よそのまばたきよ

水時間

弟の聴いてたり歌ってたりする音楽が、最近わたしにも染みる。 タイトルは知らないけど、たとえば「ピアノに住んで」というフレーズがうつくしかった曲とか。 いつまでもおまえはわたしの夢でいて赤い木馬に降る紙吹雪

メゾフォルテ

秋の雨はいっとう、ひとの気配を消してしまう。 窓の向こうの雨はやすらかでいいな。家に帰ると、キッチンで林檎の香りがしている。 鹿の蹄にやさしいようにあなたにもやさしいようにつくる雪靴